2016年05月31日

奇跡の人

原田マハ著 双葉社刊 北名古屋市東図書館蔵

  この人の作品は気に入りである。すべてを読んだわけではないが、難しい本の間に、楽しみとして目を通している。いつも読後、なぜか満足感がある。それが魅力であろうか。頭休めの本をと探していたら、この本が目に飛び込んだ。「原田さんがへレンケラーの小説?」と一瞬、脳裏に閃いた。気に入りの作家だからこれと決めて借りてきた。

 時は明治、所は青森県弘前。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない」という3重苦の少女レンのため、アメリカ帰りの旧幕臣の娘・安が教育係として招かれた。この3重苦の少女が気品と尊厳を備えた人として生きることを目標として、壮絶な指導が行われる。安の指導を妨げるのは、親、兄弟、お手伝いたち。大人達は都合のよい子に仕向けようとする。それが少女の心を閉ざしてしまう。現代の親毒。人と人が接し得るようにと「言葉」を教える。3重苦の少女にどのように教えるか読者を惹き付ける。

 現在では、高齢出産の影響でか、多動児が多いと聞く。それでも、指導法によっては人として活躍できる子になるかも知れない。作者は子どもは無限の可能性を有すると、この本で訴えている。

 歳をとると、涙腺がもろくなるという。恥ずかしい話ではあるが、この本を読みながら、何度涙を流したことだろうか。子どもの指導現場で働く人は是非読んで欲しい。可能性が見つかれば、教師冥利に尽きるではないか。


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