2019年06月29日

再読 遠雷と蜜蜂


 小説は図書館で借りて読むことが多い。本が増えすぎることと、整理に大変なことが主な理由である。もちろん、懐寂しい年金族の宿命かも知れぬが。

 今年は四月末からの10連休と騒がれた。何処へ行っても混雑は避けられないだろうと、いつでも読めるように「積ん読本」として文庫本を買っておいた。村上春樹著「騎士団長殺し」全4巻と,恩田陸著「遠雷と蜜蜂」全2巻。

 後者は初めって知った著者。図書館では貸出待ちの状態。相当な人気らしい。どちらも読んでしまった。どちらも魅力的な本であったことは事実。買っておいてよかったと思っている。「観蜂と遠雷」は現在2度目になる。それほど魅力的な内容であったである。

 ホールで聞く音楽。生で聞く音は別格。その魅力に誘われ、聴きに出かけることがある。ピアノコンテストの現状を厳しい眼で追っている。だが、音楽とは自然の贈り物として捉えようと作者は考えているようだ。その考え方にとても共感し、再読を愉しんでいる。恩田さんの本は図書館で借りて読んでみる気になっている。

  

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2017年01月31日

美術サスペンス

 

 美術関係のサスペンスを1番始めに目にしたのは学生時代だった。松本清張の作品であった。
その後、トマス・ホーヴィングの「名画狩り」であっただろうか。贋作を扱った作品であった。

 最近では「暗幕のゲルニカ」、「楽園のカンヴァス」。どちらも原田マハさんの作品である。大変興
味を持って読んだ。美術関係の資料を参考にしながら、登場する作品や画家を調べる。これが面
白い。

 この方の作品に興味を持ったのは、随分前のことである。本の題名は忘れたが、ある画家の作品
が登場していた。これが随分気に入った。その後、日曜美術館に登場されたことにより一層関心を
持つようになった。彼女は美術の専門家。キュレーターとしても活躍されていた。我が輩は美術館巡
りが好き。だが、専門的な知識はゼロ。それでも著者の作品は楽しく読める。

 最近、「サロメ」が出版された。これも是非読んでみたい。サロメの絵画はいくつかあるが、恐らく、
モローの作品を指すのではなかろうか。かような作品が大好き。  

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2016年10月29日

若き頃

 









 我が輩は残念ながら古希を迎えた老人である。「ケンジィ」と孫は呼ぶ。だが、成長できていないと
言われるかも知れないが、気分は青年である。

 戦後生まれで、戦争体験はない。だが、戦争が人の心を疲弊し、家庭を壊す。愚かな行為である
ことは知っている。8月になれば、テレビや紙面は戦争関連の報道ばかりである。悲惨な戦争を次
世代に伝えようとの配慮らしい。

 配慮は有り難いが、毎年、数日間も映像・文字で流されると感覚が麻痺してしまう。一種のマイン
ド・コントロール。これが僕には怖い。読書の秋と言われる今秋、若い頃に呼んだ関連の作品を、わ
ざわざ再度文庫本を購入して読んだ。戦争体験はないが、若い人にこんな本があるよと紹介できれ
ば、それでいい。どちらも心に刺さる素晴らしい本である。

 争いごとには絶対巻き込まれたくはない。だが、世界情勢は妖しい雰囲気。守るだけならいいが、
巻き込まれでもしたらと雲行きが怪しい国会。老いても戦争は反対。核兵器は反対。原子力発電も
反対。これも、老いから来る頑固さと断言できますか。
  

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2016年06月15日

言葉の贅肉

 
 
伊奈かっぺい著 岩波書店刊 愛知県図書館蔵

  知人がフェイスブックでこの本を紹介していた。「言葉」に関する本は意外と面白い。使い方を間違えていたり、意外な語源があったり、話のネタになったり、重宝することがある。

 日本語と言えども地方で使われる言葉でわからないことが数多くある。学生時代、指宿で道に迷い畑をしてる女性に尋ねた。さっぱりわからず、途方に暮れたことがある。天童市にボーイスカウト関係の知り合いの指導者がいる。彼の言葉は意外と理解できた。同じ東北でも津軽は難解。

 小さな日本。言葉文化は多様。尾張弁を日常語とする我々には、理解しやすい地方語とそうでない語がある。この本は津軽弁が紹介されている。少しは馴染んでみるかと鼻息は荒かった。「えくぼ」の詩が実にいい。ワープロで打ち、字を大きくして印字。音読大好きオッサン。何度も読んですらすら読めるまでに。

  だが、読み方は標準語に近い尾張弁らしい。津軽弁を楽しんで貰うためには、録音したファイルをダウンロードできるようにして欲しいと感じた。こちらのテレビではリンゴ農家のおじさんが話す言葉には標準語のテロップが流れる。実に楽しく,面白い本。 僕は津軽弁に近い言葉で音頭を楽しみたいのだが……。  

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2016年05月31日

奇跡の人

原田マハ著 双葉社刊 北名古屋市東図書館蔵

  この人の作品は気に入りである。すべてを読んだわけではないが、難しい本の間に、楽しみとして目を通している。いつも読後、なぜか満足感がある。それが魅力であろうか。頭休めの本をと探していたら、この本が目に飛び込んだ。「原田さんがへレンケラーの小説?」と一瞬、脳裏に閃いた。気に入りの作家だからこれと決めて借りてきた。

 時は明治、所は青森県弘前。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない」という3重苦の少女レンのため、アメリカ帰りの旧幕臣の娘・安が教育係として招かれた。この3重苦の少女が気品と尊厳を備えた人として生きることを目標として、壮絶な指導が行われる。安の指導を妨げるのは、親、兄弟、お手伝いたち。大人達は都合のよい子に仕向けようとする。それが少女の心を閉ざしてしまう。現代の親毒。人と人が接し得るようにと「言葉」を教える。3重苦の少女にどのように教えるか読者を惹き付ける。

 現在では、高齢出産の影響でか、多動児が多いと聞く。それでも、指導法によっては人として活躍できる子になるかも知れない。作者は子どもは無限の可能性を有すると、この本で訴えている。

 歳をとると、涙腺がもろくなるという。恥ずかしい話ではあるが、この本を読みながら、何度涙を流したことだろうか。子どもの指導現場で働く人は是非読んで欲しい。可能性が見つかれば、教師冥利に尽きるではないか。
  

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2016年03月21日

老人力

 「老人力」という言葉が飛び出したのは、確か20世紀末。21世紀が老人大国になる前触れのように言葉が踊った。それは赤瀬川源平著 筑摩書房刊の「老人力」が発端。今では当たり前に使われている。

 老人が元気溌剌、若者と同様な力を持つという意味では決してない。発想の転換をしなさい。それが老人力だと。要は老人であることを不幸に思うことなく前向きに。老いることは、若いときにできていたことができなくなる。否定的で考えるのではなく、それを肯定的に判断しなさいと訴える。歳をとれば当然物忘れが激しくなる。そんなとき、物忘れが秀でてきたと考えれば肯定的な言葉となる。服装も地味になりがち。車社会では危険だから、若者に負けじと目立つ色の服を着る。

 この本を読んで、様々な思考が浮かぶ。実は若い人にも物事をすべて否定的に考える人があると思う。そのような人には発想の転換という意味で、この本は一読の価値十分と判断している。さて、我が輩は、長年使用し、日光にあってるせいか、顔には多くの皺が。さらに、色素沈着が。残念ながら、昔紅顔の美少年も見苦しくなってきている。茶器であれば、適度な貫入に色素沈着で詫び寂びの様相を呈している。これは利休好み。さらにぼけが入り、少々思考がいびつ。これは織部仕様。ずいぶん高価な骨董品になりつつある。骨董品を上手く使うのは残念ながら白洲正子さんしかいない。他の人はお宝と称して大切に保存するだけ。

 さて、この地方で、この骨董品のジッサンたちをを上手に使う人はないだろうか。詫び、寂びが入って、少々変形もしてる。骨董品としては相当高価。これらの骨董品を上手く使う人があれば、1億総活躍時代も夢ではないと。 老人力は味わいを生む力。だから、古いが故の快さ、ダメな味わいが老人力。今年は古稀。骨頭品としてさらに磨きがかかるよう、見聞を広めたい
   

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2016年01月24日

円空

 もうずいぶん以前になるが、美術館で「円空展」を観た。大きな作品からとても小さな作品まである。美術品としてみるより親しみのある身近なお守りではないかと当時感じた。

 その後、何回も展示会を訪れ、円空仏を目にしてきた。鉈で彫っているから当然荒々しさが目に付く。だが、顔をじっくり見ると惹き付けられる。何とも表現できない笑顔。「モナリザの微笑み」とは異質。

 年甲斐もなくかような魅力に惹かれた。ちょっぴり本を読んで、円空さんを知ろうと発奮。
図書館で借用して、年末から読み耽ったのが4冊の本。梅原猛著、新潮社「歓喜する円空」、長谷川公茂著、風媒社「東海の円空を歩く」、井上雄彦著、美術出版「円空を旅する」、古田十駕著、幻冬舎「円空鉈伝」。これで少しは円空さんを知ることができた気がするが、まだまだ読む本がありそう。

 近隣には円空関係の施設がいくつかある。今年は訪ね歩く楽しみができたようだ。さらに素敵な微笑みを讃えた円空仏が見つかるかも知れないと期待して。
  

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